学校事故発生後の調査
(はじめに)
学校において重大事故や事件が発生した場合、学校がどのような報告をどこに行うか決まりはありません。文部科学省は、平成28年3月に「学校事故対応に関する指針」(以下では、「指針」といいます。)を取りまとめて公表しておりますが、この指針に強制力はありません(令和元年時点)。
そのため、実際に死亡事故が起きても、特に詳細な調査も行われず、ご遺族にすら事故の詳細が報告されないこともあります。
(詳細調査について)
指針については、厚生労働省のホームページでも公表されていますが、ここでは、被害者やご遺族にとって重要な点のみ説明します。
まず、指針では、学校事故については、調査の方法を2つに分けています。
@基本調査(学校が関係者などから聞き取りを行った内容や事故に情報を整理する程度の調査)
A詳細調査(学校の設置者が、外部の専門家などにより構成される調査委員会を立ち上げて、行う詳細な調査)
そして、死亡事故の場合は、基本調査を行った上で、学校の設置者が「被害児童生徒等の保護者の意向にも十分配慮しつつ詳細調査への移行を判断」、「少なくとも次の場合には詳細調査を実施 被害児童生徒等の保護者の要望がある場合」と指針には記載されています。
また、死亡事故以外の事故でも、治療期間が30日以上の負傷等を伴う重篤な事故の場合は、「被害児童生徒等の保護者の意向も踏まえて、学校の設置者が必要と判断したとき」と記載されています。
つまり、指針では、
死亡事故の場合は、保護者の意向があれば詳細調査を実施すべきとなっていますが、
死亡事故以外は、「保護者の意向も踏まえ、設置者が必要と判断したとき」となっています。
詳細な調査を実施して欲しいと考える被害児童生徒等の保護者は、学校や設置者(学校法人や都道府県、国など)に対して、強く働きかけを行うべきといえます。
普段から学校との信頼関係が構築されている場合は、学校側はこの指針に関わらず、調査な調査を行いご遺族に報告が行われる可能性もありますが、中立的な立場に立つ調査委員会によって調査が行われ、国に報告が上がることで、全国的な再発防止策の策定などにつながる可能性もあります。
また報道などによれば、死亡事故の場合でも詳細調査が行われることは少なく、保護者の意向が示されなかったことを理由に、詳細調査が行われないということもあるようです。
刑事事件にもなりうる事故などの場合には、警察による捜査も行われますが、警察の捜査は、再発防止などに向けた調査ではありません。また、加害者が不起訴になった場合、被害側に捜査の内容などは十分に開示されません。
(おわりに)
学校で死亡事故や重大な事故が発生しても、何らの調査も行われないということもありえます。学校側が調査をしない場合、その調査は被害側が行うことになりますが、被害者側には調査の権限はほとんどありません。被害者側が弁護士を付けたとしても、それは同様です。
指針によれば、被害者児童生徒等の保護者の意向を尊重すべきことになっています。詳細調査を行うかどうかについて、学校側が保護者の意向を確認しないこともありえます。
事故の詳細を明らかにするためには、被害者側が学校側に対して、詳細な調査を行うよう求めていくことが重要です。